2017/11/04
音楽制作においてなくてはならない存在のコンプレッサー。
楽器演奏の際は積極的に音を変化させる為に使ったり上手く聴こえさせる為に使ったりする事が多いですが、
音楽制作、ミックス・マスタリングにおいては楽曲を完成させる為に様々な使われ方をされ、楽器演奏とはまた用途が変わってきます。
ただ色々設定があるし、説明は分かりにくいしで使いこなすのはなかなか難しいですよね。
今回はそんなコンプの解説をしたいと思います。
アタックタイム / Attack time
アタックタイムとは、色々な理屈はあるのですが、ほんともう簡単に言ってしまうと音が鳴ってどこのタイミングで音を潰し始めるかの設定。
Attackが早いとすぐに圧縮が掛かり、遅くすると遅く掛かるのでアタックの強いサウンドになります。
・Attackが早い → 音のアタック成分が減る、音がまとまる
・Attackが遅い → 音のアタック成分が増える
といった感じ。
楽曲の中ではキックが一番Attackを遅くし、その次にスネア、ハイハット・ギター、ベース等と続いていきます。
ボーカルだと、
落ち着いているAメロBメロではAttackを早めに設定し音をまとめ、
サビではAttackを遅めにしアタック感の強いサウンドにすると良いです。
ちなみにAttack timeを早くして、頭から音を潰すようにすると、後述のゲインリダクションの量も変わってきますので、
後述のThresholdを弱くしてAttack timeとセットで調整すると良いです。
リリースタイム / Release time
コンプがいつまで掛かり続けるかの設定。
ここも色々な理屈は抜いて物凄く簡単に言ってしまうと、
音をどこまで伸ばすかや、音の太さを決める事が出来ます。
Releaseが早い → 音が伸びる、伸びるので音が太い
Releaseが遅い → 音の伸びが減り、歯切れの良いサウンドになる
Releaseが遅いとコンプが掛かる区域から出てもずっとコンプ(圧縮)が掛かったままになるので音の持続音が減るといった感じ。
ただReleaseが遅すぎると次の音のアタックにまで2重でコンプが掛かってしまいますし、
強くコンプを掛けてる場合、Releaseが早過ぎるとすぐに圧縮が解除されてしまい音の持続音の途中でヌーン↑と上がってしまうポンピングという現象が起きてしまうので注意が必要。
Releaseはテンポから計算する事もでき、
その場合、4拍子120BPMの曲で8分音符の2音間は下記のように計算できます。
1分=60,000ms
4分音符 = 60,000 / 120 = 500ms
8分音符 = 500 / 2 = 250ms
厳密に調整できるデジタル系コンプの場合、これを少し下回る形で調整してみるといいかもしれません。
ディストーションギターとかはReleaseを早めに設定した方が箱鳴り感や音が太くなったりするので良いです。
楽曲の構成にもよりますがボーカルの場合は、
AメロBメロではReleaseを早く設定し音を伸ばし、
サビではReleaseを遅めに設定し歯切れ良くタイトにしたりするといいですね。
目立たせたい音はReleaseを短くして持続させ、空間にすぐに溶け消えていってほしい音はReleaseを長くするといいです。
…余談ではありますが、何故かはわかりませんが、Releaseの設定に関しては解説している本やサイトによっては全く真逆の事を書いている事があります。
Release設定が早いと音の伸びが減る、といった感じのように。
1176みたいにツマミが逆になっているコンプや、
あとはSPLなどでそれこそ音のアタック成分や音の伸び、リリース音を直接調整するようなプラグインもありますのでその場合は文字通りAttackを上げればアタックが強くなりReleaseを上げれば音が伸びる(リリースが伸びる)んですけどね。
この辺の謎に関して、情報や考えがある方がいればぜひ情報提供お願いします。
スレッショルド / Threshold
ここで設定した値以上になればコンプが掛かり始めます。
0からThresholdを下げれば下げる程、小さい音からコンプが掛かり始めるので、音が小さくなり均一になります。
なのでThresholdを下げ音を均一にしてからゲインで音量を上げれば音の音圧が上がります。
ボイスドラマのように人の声が遠くなったり近くなったりとさせたい場合、このThresholdをオートメーションで動かせばいい感じに効果を演出する事ができます。
☆ゲインリダクション / Gain Reduction
ここで重要なのがタイトルでも触れたゲインリダクション(Gain Reduction)の値。
略してGRと書かれていたりします。
よくコンプレッサーにはメーターが付いていたりしますよね。
あのメーターには基本、Inputボリューム、Outputボリューム、GR、といった3種類があり、
それぞれ独立してメーターが付属していたり、スイッチによって表示を切り替えたりする事が出来ます。
上記、画像では右側サイドにMETER(メーター)スイッチがあるので、それぞれ選ぶ事によりメーター表示を切り替える事ができます。
このゲインリダクションというのは何を示しているのかというと、どこまで元の音から圧縮されているかという数値。
耳で調整するのは大事ですが、こうした数値の見方を知り指標にするのはとても大切です。
特にパラメーターとしては大体、-3db・-6db・-9db・-12db辺りを前後した形で表示されており、
これは何故かというと-6dbで音が半分に圧縮されているので、ここが大きな一つの指標になります。
-3dbまでですとコンプ感はほとんど感じない掛かり方になりますし、
-6db辺りでしっかりとコンプが掛かってくるような形になります。
コンプ感を極力出さずにコンプをより掛けたい場合、-3dbのリダクションに抑えたコンプを2段で掛けたりすると良いです。
もちろん使うコンプによって同じリダクション量でも掛かり方は変わってきますので、色々試してみるのがいいかもしれません。
どれだけ圧縮すればいいか分からない!という方はこのGRを一つの指標として活用してみましょう。
レシオ / Ratio
元音とコンプで圧縮した音の比率を調整できます。
簡単に効果を説明すると、
Ratioを上げればどんどん音が固く固形物のようになり、
Ratioを下げれば柔らかく空気感のあるサウンドになります。
低域パート程Ratioを上げ、高域パートになる程Ratioを下げフワッと華やかな感じを演出すると良さそうです。
キック等で張り付いたような音にしたい場合、大体6:1~8:1辺りでRatioを上げるといいですね。
固すぎると思ったら下げればいいです。
デジタル系コンプレッサーではそれこそRetioはかなり細かく設定できるのですが、
アナログのビンテージ機材やそれをモデリングしたプラグインでは大体数値が決まっていたりします。
とくにプロの現場で定番機材の1176系ではRetioは4:1・8:1・12:1・20:1・∞というように選択肢が決まっているので、
悩む場合はこの値を参考にしてみてもいいかもしれません。
4:1はある程度コンプは掛かっている状態なので、それ以下にするなら厳密に調整できるデジタル系コンプ等も併用すると良さそうです。
インプット・アウトプットについて
大抵コンプにはインプットゲインとアウトプットゲインが付いている事が多いです。
「インプットを突っ込む」といったような表現をされたりする事もありますが、
インプットで大きなゲインで音を入れてしまうと音が歪んでしまったりします。
逆にそういう効果を狙ってあえてインプットを上げその分アウトプットを下げバランスを取ったりという事もされますし、
逆にクリーンに保ちたい場合、インプットを抑えておき、その分アウトプットで補うといった事もできます。
ビンテージコンプ
1176やLA-2Aのようにビンテージコンプでは、インプットがThresholdの代わりになっている事も。
この場合はインプットを上げ、ある規定値を越える程、強くThresholdが掛かっていきます。
そして大きくなってしまった分をアウトプットで調整するといった形。
このタイプのコンプで、逆に強く掛けたくないという場合はインプットを抑えておき、その分アウトプットで稼ぐといったようにすればいいですね。
ここもゲインリダクションのメーターを一つの指標として見てみると分かりやすくなります。
MY使用コンプ
ここで僕が普段使用しているコンプレッサーについてご紹介します。
FMR Audio RNC1773(BACK TO BASICS)
掛け録り用のアウトボードコンプ
特にスーパーナイスモードはコンプ感を一切感じさせずナチュラルに音を整えピークを抑えてくれます。
3万くらいの値段ですが、20万以上のラックコンプに匹敵するという触れ込みはよく耳にしますし、エフェクターボードに組み込んでいる奏者も結構拝見します。
以下はプラグイン。
CLA-2A
CLA-2Aはボーカルをざっくり圧縮したい時に最初の方の段で使ったり使わなかったり。
基本設定項目はインプット(Threshold)とアウトプットだけなのでこのざっくり感がいいですね。
モデリング元になったLA-2Aは海外サイトのコンプレッサーランキングで1位になっています。
CLA-76
スタジオ大定番機材、Urei 1176のモデリングプラグイン。
上記のCLA-2Aと共に、WAVES CLA-Compressorsを購入して手に入れました。
現在このコンプが一番使用頻度高いですね。本当に使いやすい!
ほとんどのスタジオで使われているのも納得できます。
1176は各社色々なとこからモデリングが出ているのですが、一番実機のモデリングとして評判は高いのはUNIVERSAL AUDIO。
かなり使用頻度も高いのでApolloやUADを購入した場合そちらも使ってみたいですが、
天下のWAVESは購入・導入のしやすさがいいですね。
もちろん、WAVESの1176コンプもプロが「このプラグインを使った」と紹介されている中で頻繁に登場しますので問題ありません。
SSL G-Master Buss Compressor
マスターやドラムBus等に掛けると音が音楽的にまとまります。
凄くいいです(笑)
こちらはコンプというよりも、Thresholdを+方向にして、エキスパンダーとして使用しています。
小さい音が圧縮されるのでスッキリします。
SSL 4000バンドルはSSL E-Channelのチャンネルストリップなんかほとんどのトラックに使用していますし、かなり良い買い物でしたね。
Resonance-Compressor (R-COMP)
WAVESの入門バンドル、GOLDにも付属しているコンプ。
僕はPlatinum(現在はDIAMOND)を購入した際にゲットしましたが、とても使いやすい上に下位バンドルにも付属しているので使用している方はかなりいるかと思います。
若干のアナログ感もあり、CLA-76を手に入れるまではメインのコンプとしてなんにでも使っていました。
音を綺麗に潰し整えやすい上に、各項目かなり細かく調整できるので、現在はマスタリングの最終コンプとして使用したり、
各トラックでももう少しどうにかしたいといった時にたまーに使ったりします。
その他WAVESプラグインはこちらから見る事が出来ます。
アナログモデリング系のプラグインはそのざっくりとした操作でいい結果に出来るのが非常に良いですね。
細かくシビアに調整できるデジタル系コンプはR-COMPかその代替のものくらいで僕は十分です(笑)
ただあとは使いやすいマルチバンドコンプレッサー辺りは欲しいところ。
Dynamic Spectrum Mapper v2というマルチバンドコンプレッサーが音源を解析した上で設定してくれるようで気になっています。
まとめ
普通の人は普段プロの完全に完成された音源しか聴く事がないのであまり理解をされている事はありませんが、
DTMをやっていると本当にやらないといけない事が沢山あり、クオリティーを上げようとすると大変ですよね。
その中でもコンプの登場頻度というのは非常に多く、軽く掛ける場合でも強く掛ける場合でもしっかりと使いこなしたいところ。
どのコンプを使うかでも使用感が全く変わってきますし、経験がモノをいう部分ではありますので、
今回の記事を是非ご参考にしてコンプを活用してください。