2019/07/27
昨今、漫画や映画、音楽など、著作権の問題がよく話題に上がるようになりました。
その中で悪者にされやすいJASRACですが、先日文化庁がJASRACの音楽教室への徴収開始を支持した事が話題に。
今回はそんなJASRAC関係で流れる噂などを集め、検証してみました。
Contents
- 1 そもそも何故嫌われるのか
- 2 ネットで広がるJASRACの噂をまとめて検証してみた。
- 2.1 まず海外はどうなってるの?
- 2.2 何でもかんでも著作権徴収されるのか?
- 2.3 「ファンキー末吉」の件
- 2.4 「宇多田ヒカル」のツイートの件
- 2.5 雅楽にいきなり著作権料求める?!
- 2.6 JASRACに天下りは本当にいるのか?
- 2.7 なぜ、音楽教室から著作権徴収?
- 2.8 楽譜で著作権料はすでに払っているのでは?二重徴収?
- 2.9 他の様々な業種・お店からの著作権徴収について
- 2.10 GLAYが結婚式で著作権料徴収はしない!?
- 2.11 JASRACは不当に儲けてる?他の著作権会社になれば?
- 2.12 モノづくりは無償の精神だ!
- 2.13 漫画は二次創作認められているよね?
- 2.14 ゲームに使いたい人気楽曲を使えない?
- 2.15 JASRACがMIDI文化を壊したのか
- 3 最後に
そもそも何故嫌われるのか
ネットの議論を見ていると、JASRACは“絶対悪だ”と位置付け全く議論にすらなっていないものばかりでした。
(議論しようとしてもほとんどが感情論で、絶対悪であるという回答しか受け付けないという人ばかり)
さながら言論弾圧のよう。
何故JASRACは絶対悪じゃないといけないのか。
嫌われる理由については色々な理由があるかと思いますが、
まず一つ目としては、
著作権法などが整備され、著作権を徴収していく過程で“今まで支払っていなかった所に支払いを要求する”という事が結果的に段階的・断続的に発生していっていたという事。
給食費徴収係って嫌われるんですよね。増税だってその瞬間一気に支持率落ちます。
でも“給食費徴収を委託しているのは給食費徴収係ではない”んです。
そして一番の理由、それは、
「一般ユーザーにとって都合の良い状態は、“JASRACは悪の権化(ごんげ)”で“著作権法も、著作権という概念も存在しない”世界」
(※モノは全て無料であるという世界。漫画も「無料ダウンロードサイトを潰すな!文化を潰すな!」と主張する人達がいますよね。悪の権化だけが存在しませんが)
だから、いくら当事者の人達がJASRACからちゃんと印税を貰っているとか言ってもそういうツイートなどは絶対に拡散される事はありません。
(JASRACは悪だというツイートであれば何でも伸びる)
ちゃんと作家に還元してくれてますよ、ハイキューの放送使用料や、DVDでの使用料や配信の分もきちんと計測してます。僕ら作家からするとありがたい存在なのですが、世間の評判が悪くてなんだか申し訳ないといつも思ってます。
— 林ゆうき (@hayayu1231) 2017年11月11日
JASRACのおかげで生活できてる作家さん多いけど、当たり前すぎてわざわざ声にする人がいないということなのでは。
仕事してお金が入って、それで生活できてます!ってわざわざ言う人ってかなり変わった人だと思う。 https://t.co/Lwm09lYjmJ— CHEEBOW@✩週末音楽家✩ (@cheebow) 2017年11月10日
普通に考えて、超大手のソニーミュージックなどのほとんどのレコード会社は著作権管理をJASRACに任せていますが、任せているという事実も含めて、JASRACからお金が来てないなんて全く主張されていませんし、それは所属アーティスト含め、他の中小音楽事務所などもそうですよね。
JASRACからお金が入ってこなかったり、問題があるなら管理を任せませんし、そういう主張が出てくるはずです。
作曲/編曲など音楽作家への報酬は大きく分けて「買い取り」と「印税」の2つがありますが、
そもそも“印税生活”という単語が世の中に存在する時点で、JASRACが徴収印税払ってないなら一体誰が払ってるんだ?
という少し考えればすぐに出てくる疑問が沸いてきます。
ネットで広がるJASRACの噂をまとめて検証してみた。
実際の所、JASRAC関係の話題はほとんどがデマや悪意のある誇張などばかり。
もっと建設的・現実的に「ホントのとこどうなの?」という部分気になる方も多いかと思いますので、
今回JASRAC関連のネットに流れる噂に関して、感情論や先入観一切なく一気にまとめて検証していきました。
なお、こちらのブログ様が詳しく書かれていましたので、一部抜粋させて頂いております(了承済)。
『音楽教室と著作権(JASRAC)』
まず海外はどうなってるの?
欧米はとっくの昔に営利目的の音楽教室からも著作権印税を徴収しています。
JASRACの話題もそうですがこういう時ってよく「日本はおかしい!」「日本の音楽は終わった!」などと主張する人がいますが、
そういう人はだからって海外の情報をちゃんと収集している訳じゃないんですよね。
日本に著作権法や著作権会社があるのであれば、もちろん他の国にだってありますし、
むしろもっと厳しいです。
「日本の使用料は極端に低い」欧米団体から強く要請 JASRAC、映画音楽の上映使用料を引き上げへ 劇場側は「死活問題」と反発(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース
最初に“欧米は”と書いたのは、それ以外は自分は未確認だからです。ちゃんと真偽が分からない事を流布しない方がいいですからね。
著作権から開放されたいのであれば、著作権に緩い中国などに行けば幸せになれるかもしれません。
何でもかんでも著作権徴収されるのか?
著作権法という法律などに基づいて、著作権徴収される一番の考え方としては、
「他人の作品を利用し、利益を得ているか」
という部分に尽きるかと思います。
JASRACに関してさらに言えば、
『JASRACに著作権料徴収してくれと音楽レコード会社やアーティストから委託登録されている楽曲を利用しているかどうか』
になります。
なので、JASRACに楽曲が登録されているという事は、
音楽レーベル会社やアーティストなどの著作者がJASRACに著作権料徴収してほしいと楽曲を委託登録しているという事になります(世の中のほとんどのレーベルやアーティストがJASRACなどの著作権会社に著作権料徴収の委託をしています)。
そこを念頭に見ていってください。
「ファンキー末吉」の件
最高裁まで行って完全敗訴しています。
裁判になると様々な証拠や事実確認が行われていくかと思いますが、
日本はお国相手にも裁判を起こして勝訴できる法治国家です。
ちなみにJASRACは今までの裁判、ほとんど勝ち続けており、
今回文化庁がJASRACに徴収開始を支持した事も含め、
実際法律的にJASRAC側が適法であるという事になります。
ちなみに記事タイトルには刺激的な「JASRACからの分配、1円もない」と書かれていたりしますが、
ファンキー末吉氏はそのような言い回しは発言されていません。
小規模のライブハウスに関しては、全ての曲目を逐一報告させるのは双方負担が大きいので、
視聴率などと同じくサンプリング調査という形を取っています。
この小規模ライブハウスでのサンプリング店に含まれていなかったのか「分配がなかった」との事ですので、
カラオケ印税など他の様々な印税に関してJASRACからちゃんと支払われている事を本人も認めています。
さらに、実はJASRACはファンキー末吉氏のライブハウスに、
サンプリング調査以外の方法も提案していた事がその後地裁判決で判明しました。
この一件で、ファンキー末吉氏は完全敗訴。
「自分の曲が使えない」といったニュースもありましたが、結局あれもよく見ると著作権料未納において係争中のこのライブハウスの利用での問題なだけでした。
「宇多田ヒカル」のツイートの件
宇多田ヒカルさんの所属しているアメリカの著作権会社はとっくの昔から営利目的の音楽教室から著作権料徴収しています。
宇多田ヒカルさんはずっと著作権料徴収を委託して利益を得ています。
雅楽にいきなり著作権料求める?!
これよく見るとJASRACは雅楽コンサート側に一度も著作権料払えなんて言ってないんですよね。
雅楽という音楽ジャンルにももちろん「著作権料徴収してくれとJASRACに委託登録されている楽曲」がありますので、
基本的にJASRACなどの著作権会社は大きな規模の音楽イベントがあるとその辺りの楽曲の利用があるか確認を取ります。
これは上記のファンキー末吉氏の一件とは違い、ある程度規模の大きいコンサートなので、ちゃんと曲目を把握する事によって完璧に正確な印税分配を実現する為のもの。
この雅楽の一件をまとめると「JASRACから確認の電話なんて気に食わん!愚痴ろう」といっただけの内容なのですが、
そりゃこんな人も出てくるんですから、ファンキー末吉氏のような小規模の零細ライブハウスにおいてはサンプリング調査が有効な訳です。
例えると、年配の人がお酒を買おうとして「どうみても20歳以上だろ!何で確認ボタン押さないといけないんだ!絶対押さない!めちゃくちゃ腹立った!」
といった内容と同じです。ほんとに内容はそれだけの話。
ちなみにその確認の電話も“JASRACの若い人から電話が掛かってきた”との事ですが、
まあその辺のコンサートなどに著作権関連で電話掛けて確認取るといった人なんて、会社としては雇われの下っ端ですよね。
私達も働いていたらわかりますが、対応で間違ったり読めない字があったりなんてよくある事で(雅楽“ががく”という読み方はこの一件で知った人も多いかと思います)、
正直全体的に雅楽演奏者サイドの人が大人げなかったという印象。
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ちなみに、この後の内容も含め色々説明した後に最後の最後の最後に残るやっとの批判として、
ファンキー末吉氏の件と関連して『小規模ライブハウス』においてのサンプリング調査に対しての漏れに対する是非を問う方がいますが、色々見てきましたが大体まともな対案は出てきません。他に方法がないから。
何故なら何かの機器を使うにしても何にしてもどうしても必ずアナログの作業を経由しますので、双方の大負担、とくにライブハウス側の負担が大きすぎるので、いざ毎回逐一全ての楽曲を申告しろと言われれば業務の大負担とならざるを得ないので、そうなれば結局大多数の小規模ライブハウスは大不満が噴出し反対する理由が無くなる為です。申告の信憑性問題もあります。
ちなみに、全体の金額ベースで言えば98%はサンプリングに頼らない方法になっており、
もちろんある程度大きいライブの他、
他のカラオケやCD販売などのように完全に楽曲や販売数を把握できるものなどは全てそういった漏れなどもありません。
※詳しくは後述
そもそもテレビの視聴率なども同じですが、サンプリング調査自体が統計学的に問題が無いものであり、
結局残るものは給食費徴収係のJASRACに対する何となくの嫌悪のみとなります。
(そもそもその辺の漏れ云々はJASRACが悪だとかという事には全く繋がらない話ですよね)
※支払い等についても後述
JASRACに天下りは本当にいるのか?
そういえばスグに「天下りが~」と言い出す人も居ますが、ちなみに天下りが居ても居なくても、これは著作権料を支払わない理由とは何も関係ありません。
何より実際に天下りは居ないのですから、これも事実無根の誹謗中傷に当たりますよ。
色々ちゃんと調べていると、JASRACには天下りはいないという情報の方が出てきますが、
本当に天下りがいるのであればその人の名前くらい出てくるのではないでしょうか。
ちなみにJASRACに天下りがいるのではないかという裁判で、無実が証明されJASRACが勝訴しています。
民衆が「“JASRACは悪の権化(ごんげ)”で“著作権法も、著作権という概念も存在しない”世界」を望んでいる結果、
とにかく何でもいいから悪評に繋がるデマを望んでいるように感じます。
なぜ、音楽教室から著作権徴収?
理由は、『音楽教室という名で、営利目的で全国チェーンで商売しているお店だから』
そして、『著作権徴収をしてくれと“アーティストから”委託されている人気楽曲を無断で利用し、商用利用しているから』
なので、商用利用するのであればその分の著作権徴収は必要だという話。
ちなみに音楽教室と、学校の音楽の授業は全くの別物だと、弁護士の見解などが出ていましたが、先日文部科学省も同様の判断を下しました。
音楽教室と学校は異なる。文部科学省もJASRACに理解を示す。 | Rainbow Sound Cafe
教育機関である学校は今回の徴収とは関係がなく、この辺りは法律に基いて判断されているようです。
※よく混同されますが、『学校』と『営利目的のお店である音楽教室』は別です。今回の一件に学校は関係ありません。
よく聞く反論として「公の場なのか云々〜」というものがありますが、基本的に教室の先生の仕事というのは『生徒に教える事が仕事内容』なので、
“著作権料徴収を委託されている他人の作った魅力的な楽曲を使って、公の場で広く募った生徒に指導し、その対価として商売としてお金を貰っている”という時点で商用利用していると言えます(お金も貰わず友達に教えてもらっているのとは違いますよね)。
この辺りで教室サイドは裁判において「法的な解釈を超えて判断を〜」との事ですので、法的に分が悪い事は分かっていたようです。
お金儲けをしていないのなら、僕ら著作者も、そこから著作権料を頂戴しようとは誰も思いません。
様々なお金儲けのシーンで音楽作品の価値が正当に評価され、著作権料の収受が実現しています。
作詞・作曲家たちは、その著作権料が報酬なのです。
音楽教室は教育だから?
法で定めるところの教育とは、非営利の学校教育を指すものです。
音楽教室も「教育だ」を大義名分にしたいのなら、みんな学校法人として運営をすればいいのです。
勤務する講師たちも教員免許を取得してみてはいかがでしょう。
そもそも趣味・娯楽の享受の場である営利の音楽教室と、学校教育は全然の別物だと思いますよ。
僕自身、現在も両方に勤務していますから、その違いも実体験してよく知っています。
さらに音楽教室への徴収は、音楽教室で商用利用されている作品が事実無断使用だったのでこれから材料費が定額で掛かるという話なので、
教室に通う生徒に対して著作権徴収する訳じゃありません。
なので、営利目的で商売をしている音楽教室が、生徒に請求している高額な月謝の値上げをするかどうかは、あくまで音楽教室側の問題となります。
なお、音楽教室の月謝が5000円〜だとすれば、著作権料で上乗せされるのはせいぜい一人辺り最大でも100円程度です。
もし全ての著作権料費用を月謝に上乗せしたとしても、5000円が最大5100円程度になるだけで全て合法運営になるという事ですが、
基本的にネットではJASRACは悪の権化という図式が流れているので、この辺りは完全に0か100か論で語られています。
例えば5000円が5001円になっただけで負担なんてあるのでしょうか?
料率については十分話し合う余地はあると思うのですが、教室側は1銭も払いたくないとの主張でしたので、それはおかしいのではと抗議されています。
無論、ネットではそんなレベルの話し合いには到底達していません。
ちなみに前述でもお伝えしましたが、欧米などの著作権がしっかりしている海外では、
とっくの昔からすでに営利目的の音楽教室から著作権徴収は行われています。
楽譜で著作権料はすでに払っているのでは?二重徴収?
個人的にはこれが一番よく考えれば分かる変な主張です。
楽譜における著作権料徴収というのは、『JASRACに著作権料徴収を委託されている他人の人気楽曲』を使って、譜面をコピーして販売する業者に対するもの。
楽譜購入に関しては、あくまで購入者が楽しむものであり、その後の利用に関しては購入者次第ですよね。
もし楽譜を手に入れる事で著作権料徴収が免除できるのであればどのような事態が発生するのか?
それは“楽譜が著作権免罪符”になるという事。
サトル「タケシー!!店で無断でコピーして販売しているCDがバレたー!あとYoutubeにも無断使用で消されそうだから免罪符貸してくれッー!!」
タケシ「はい。(◯◯のアーティストの楽譜を渡す)」
サトル「よっしゃ!◯◯のアーティストの楽譜を手に入れた!これで著作権料は払ってる事になるから俺は◯◯のアーティストの著作権を全て無視できるようになるぜ!!」
そして、著作権免罪符であるアーティストの楽譜を皆で貸し回し、著作権を完全無視していける世の中になります。
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ちなみに本当に多重請求と言えるのは、例えば「この前アリーナでやったカバーライブの著作権料を払ったのに、また同じライブの著作権料要求された。それ払ったのにまた3度目の請求をされた。また同じライブの分の請求をされた!4回目!」というものです(そんな事があればすぐ警察沙汰ですよね)。
他の様々な業種・お店からの著作権徴収について
結局『著作権徴収をしてくれとアーティストからJASRACに徴収委託登録されている楽曲』を利用し、利益を得ているかに尽きます。
音楽を流したいのであれば、方法なんて何だってあるんです。
ボカロ楽曲だってJASRACに著作権徴収をお願いしている楽曲でなければ著作権会社だとか関係ない訳ですし、
著作権フリーで流せる音楽アプリや、より安い金額でお店で流す事ができるサービスだってあります。
ただ、なぜわざわざJASRACに著作権徴収の委託をされている人気楽曲を利用したいかといえば、それを利用してお店により付加価値を付けて利益を得たいから。
フォントでも何でも、いいものを商用利用しようと思ったらお金が掛かってきますよね。
この辺りの意向は、給食費徴収係であるJASRACというよりも、著作権料を徴収してくれと委託しているアーティストや音楽レコード会社の意向の部分が大きいです。
GLAYが結婚式で著作権料徴収はしない!?
GLAY及び有限会社ラバーソウルは、GLAY名義で発表しているGLAY楽曲をブライダルで使用する場合に限り、著作隣接権について使用者からの料金を徴収しないことを報告させて頂きます。
先日このような発表があり話題になりました。
ここで『著作権料なんていらないぜって言うGLAYかっけー! & それでも著作権徴収を行おうとするがめついJASRAC!』
という対決構図がネットで造成されました。
ただもちろん、「GLAYは著作権料徴収を放棄する」なんて一言も言ってもいないし、引き続きGLAYがJASRACに著作権料徴収を委託している状態です。
“ブライダルで使用する場合に限り”や“著作隣接権料について”としっかり書かれていますよね。
たとえ結婚式でGLAYの曲を使用する際でも、引き続き著作権料は徴収されます(結婚式以外のシチュエーションでは言わずもがな)。
GLAYが結婚式(ブライダル)だけで「著作隣接権料」を徴収しないと言う理由は、結婚関係の曲がいくつかあるからだとか何となく察しが尽きますが、
非常に内容が中途半端で正直混乱を招いて対決構図を強くしただけな感じがしますので、
GLAYには是非とも著作権料徴収をJASRACへお願いしているのを止める!と言って欲しいですね。
(印税はアーティストのメインの収入の一つなので絶対にそんな事は無いですが)
JASRACは不当に儲けてる?他の著作権会社になれば?
事実無根のデマを根拠として「デモお金の流れが不透明だから」とか「ダッテJASRACはお金を集めるだけ集めて、ちゃんと作者たちに支払われないから」とか。
当事者はJASRACではなく、僕ら著作者であるという事実。
僕自身は作曲家であり、同時にミュージシャンとしてコンサートなどの演奏活動、レコーディングをしてCDを販売しています。
毎回、コンサートでも、CDのレコーディング~販売にしても、曲目リストを提出し、その中から著作権料の発生する作品に対しては、正しく使用料を納めています。
自分自身のオリジナル曲もコンサートで演奏しますし、CDにも収録していますので、支払われたお金が正しく分配されている事実も確認済みです。
また、テレビやラジオでも僕の曲をたくさん使っていただいていますが、年に4回とても詳しく記載された利用実績リストと共に、1日たりと遅れることなく銀行口座に印税が送金されてきます。
利用者が支払った料金は、僕ら著作者に一旦全額が支払われる、これが何より大事にしなくてはいけない事実です。
この点は完全に透明であるということは僕ら著作者自身が確認済みです。
お金の流れがブラックボックスのようだと言ってる人は、今すぐJASRACのホームページでも見てきてください。
この段階ではJASRACは1円たりとピンハネはしていないのです。
その後、僕ら著作者が頂いた印税の中から、既定のパーセンテージでJASRACに対し、僕ら著作者が手数料を納めていますが、この計算表も、年4回の分配明細書にきちんと記載されていますので、これも完全に透明です。
二言目には不透明だ!という人があまりにも多いですが、それは僕ら著作者の給料明細を見なきゃ気が済まないってことですか?
なのでしたら、それはとても悪趣味ですよね。
僕らが嘘をついてまでJASRACを庇う必要は無いのです。
音楽を作ってJASRACと契約をして著作権の料金収受をお願いしている。
これは僕ら著作者の働き方のスタイル、それだけなのです。
上記の引用含め、前述でもお伝えした、本当にJASRACが不当にピンハネしているのであれば、
著作権管理などを任せている大手ソニーミュージックなど、様々な大中小音楽レーベル会社やアーティストの存在が疑問になってきてしまいますよね。
“印税”や“印税生活”という単語も、JASRACが払ってないのであれば、一体どこの誰が払っているのか?
と割とすぐに出てくる疑問にぶち当たってしまいます。
現在Youtubeでは、JASRACなどの著作権会社と包括契約を行っていますので、
JASRACなどの著作権会社に登録されている楽曲を自分達でコピーした自作音源であれば、
一般利用者が自ら音楽レーベル会社などに確認を取ったりお金を払う事もなく、適法でアップロードする事ができます。
という事は、
ソニーなど様々な大中小音楽レーベル会社やアーティストがJASRACに著作権管理を完全に任せているという事。
例えばCDやカラオケ印税など、数字がすぐに確認取れるようなものだっていくらでもあります。
そこでもしJASRACが不当な利益を得ているのであれば、様々な大手の会社がJASRACに大事な商品の著作権管理を任せるどころか、
問題提起くらいもう少しあるはずですよね。
利益のパーセンテージなど、“当事者達”がちゃんと確認して了解を得て契約しているという事。
ちなみに、
JASRACは“非営利”目的の運営が法律により定められている一般社団法人です。
非営利というのは儲ける事が目的じゃないようにと定められているという事です。
他の著作権会社は大体営利目的の会社なので、JASRACの他の著作権会社は他に多々ありますが、
他の会社が成長しても特に変わらないどころか、より負担増になり兼ねません。
むしろ私が一番危惧しているのは、
海外の事情も全く知らず「日本はおかしい!」「JASRACは悪の権化だ!」と言い続けながら、
ガラケーの中にApple iPhoneや、小売のAmazonが参入してきた時と同じように、
海外資本の著作権会社が一気に入ってきて、結果負担も大きくなって利益も全て海外資本に全て吸い取られてしまうといった未来があり得るという話。
健全な競争ならばいいですが、
その内容が『JASRACは絶対悪→民衆の力で海外資本に入れ替えさせたら海外資本でも内容ほとんど同じでむしろもっと厳しかった』では馬鹿らしいですよね。
モノづくりは無償の精神だ!
いわゆる嫌儲的な話とかしだすと、思想の問題とか入ってきて非常に面倒ですが、ネットを見ていると、
「クリエイティブは無償の精神だ!」「音楽は元々手を叩いたりお金から関係ない所から発生した!」「音楽は公共物!」とかって意見をたまに見かけますが、
基本的にそんな事を言ってる人って、当事者とはかけ離れている人。
自分の生活が脅かされ始めるとそんな事絶対に言いません。
例えば牛丼屋で働いていたとして「モノづくりは無償の精神だ!人々を喜ばせる為に無償で牛丼を提供しろ!社会奉仕でお金貰うなんて!」と言われたらたまったもんじゃないですよね。いやまあ、北朝鮮などのような社会主義を目指していての発言なら別にいいですけどね。
近年ではアニメーターやプログラマーなどの労働環境や給料などが問題になっていますが、
そういう方々にも「絵は元々壁に絵を描いた所から始まっている!お金を得るなんてとんでもない!」
などと主張すればいいかと思います。
JASRACの話に戻すと、
結局JASRACに著作権料徴収の委託登録してお願いしているのはあくまで音楽レコード会社やクリエイター・アーティスト側。
「元々手を叩いたり自然発生的なものから音楽は発生した」とかそんなの全く関係ない話であり、商品として売り物があり、その売り物の著作権徴収を依頼するアーティストがいて、その商品に利用価値があると思う一般ユーザーがいるというだけの話なのです。
(そんな事を主張する人に限って、JASRAC登録楽曲を無断利用していますが、本当にそう思うなら都合よく他人の人気楽曲を使って集客せずに、全て自分達で手を叩きながら作って流しておけば良いのでは良いかと。)
ちなみにここで「それじゃあJASRAC以外の音源使えばいいのでは?」や「著作権フリーを掲げれば皆それを使って商機があるのでは」といった意見が発生してきますが、
もちろんJASRACに著作権料徴収委託されている楽曲を使わなければいいだけ。
でも皆JASRAC登録楽曲を使いたいんです。なぜなら結局それが音楽を仕事として作っていける能力のある人達が作ったものだから。
商機やチャンスも何も、世の中に著作権フリー音楽素材はすでにいくらでもあります。
漫画は二次創作認められているよね?
漫画は二次創作を事実上黙認されています。
では音楽はどうかと言えば、
現在JASRACなどの音楽著作権会社はYoutubeなどの動画サイトと包括契約を結んでくれていますので、
利用者は自身で作った自作の音源で包括契約を結んでいるJASRACなどの登録楽曲であれば、レーベルに確認やお金を払う事なく、
漫画より適法でクリアにアップロードする事ができます。
(ちなみにこれがJASRACなどの包括契約を結んでくれている著作権会社がいなくなるとどうなるかといえば、権利違反で全て削除されるか、最悪訴訟されます。)
自作音源ではなく、CDなどの音源をそのまま使うのはNGです。
これが漫画より厳しいかと言えば全く同じ。
漫画も二次創作は事実上OKですが、公式絵を無断で使用しアップロードしたり販売するのはNGです。
という事は、自身で音源を1から作れないというのは、漫画で言えば漫画を作れないのと同じ訳ですので、
この辺りの基準は極めて妥当性があるかと言えます。
ゲームに使いたい人気楽曲を使えない?
基本無料ゲームアプリに人気楽曲を使用しようとすると、「JASRACに利用者分払えと言われた!」とか「クエスト限定で使用するなら周回分支払えと言われた!」と愚痴っている方がいました。
もしこのJASRAC側の話が間違っていたとするならば、
「無料ゲームと称した最新人気楽曲聴き放題無料アプリ」が成立してしまうという問題が発生する事になります。
他の通常のミュージックアプリや、最近の聴き放題ストリーミング音楽サービスなどは、その辺りを適法にちゃんと当事者まで納得する形で契約がされています(ストリーミングサービスやカラオケはその楽曲が何回再生されるかによって著作者に還元される仕組み)。
一見「え?」と思ってしまう話題ですが、
実際そういった今後大きな問題が発生してしまう事や、様々な矛盾、公平性、さらには著作権法などの法律と照らし合わせても、
極めて適法かつ妥当な回答ではあるかと思います。
開発者としてはより盛り上げる為に、1回分の購入で人気楽曲を自分の基本無料ゲームで流しまくって、よりアプリの価値を上げたいとはそりゃあ思うでしょうけどね。
ちなみにこれは音楽面に限らず、人気アニメとのタイアップとしても通常公式原作絵などをそのまま使用するという事はほぼなくゲーム用に新規にイラストを受注して利用する事が一般的なので、「イラストはゲーム用に新規に受注して作るけど、音楽はそのまま流用して使えばいいじゃん笑」なんてのは完全に音楽軽視ですよね。
JASRACがMIDI文化を壊したのか
最近はもうそんな事言ってる人少なくなってきましたが、「JASRACがMIDI狩りをしてMIDI文化を壊した」などと主張する人がいます。
まず根本的な問題として、当時の状況を振り返ると、
「様々なサイトで人気楽曲をコピーしてMIDI音源で無断放送・配布していた。」
という状況になりますが、そもそもよく考えると2020年も近づいてきた現在、どう考えてもこれ絶対今はNGですよね。
NGという表現は間違ってますね。
禁止しているのではなく、やるなら許可を得てその分の著作権料をという話。
当時は着メロ着うたが出てきた時なので、丁度実際当事者のアーティストが販売する商品と完全にぶつかってしまいます。
もしJASRACがいなくても、著作権法が整備され、世界的にそれが基準化している中で、それがそのままというのは普通に考えれば絶対ありません。
あと、MIDI文化と言いますが、
MIDIは現在第一線でガンガン活躍しています。
DTM・音楽制作などをしている方ならわかりますが、現在制作されている楽曲の打ち込み部分は全てMIDIで制作されています。
当時はチープな音源だったので、無くなったように感じる人がいるかもしれませんが、ただ音源がハイクオリティーになっただけの話。
VOCALOIDが生まれて10年以上経った今でも毎日毎日沢山の新規楽曲が生まれている事を考えても、
そういった文化は廃れたどころか、めちゃくちゃ進化し、大きくなっています。
最後に
ネットに流れる噂などを見ていると、ほとんどがデマや悪意のある誇張ばかりで、
たまに流れる建設的な話には、絶対悪であるという前提の元まともな話し合いがなかなかされる事がなく、
実際の著作権を受け取るような当事者達の意見は沢山上がっているにも関わらず、完全に無視されているという状況でした。
ここの理由は冒頭にも書いた通りいくつかあるかと思いますが、やはり一般人が実際問題、
「“JASRACは悪の権化(ごんげ)”で“著作権法も、著作権という概念も存在しない”世界」
を望んでいる事、嫌儲的思考、嫌われ役の給食費徴収係、などの原因が絡み合っているかと思います。
突き詰めていけば最終的にJASRACが問題になる事って、感情論か他のどの会社でも問題提起できそうな事くらいしか残ってません。
最近では漫画が違法アップロードされている漫◯村が国会などでも取り上げられ話題になりましたが、
やはりそこでも、
「難しい問題だ…漫画を買うのはお金が掛かるし無料で漫画を見て楽しんだ後判断できた方がいい」だとか「俺たちの漫◯村を潰すな!文化が潰れる!」なんて逆ギレしてる意見が結構ありました。
漫画や映画、A◯などは違法アップロード云々と言われると、
法律とわかりつつも、そりゃ無料のダダ流しで色々見れる方が良いので、実際心の奥底でモヤモヤといった気持ちがあったりもするかと思いますが、
音楽は特性上JASRACに注目が集まり、巨悪にする事が出来てしまいます。
それがまともな議論であればいいんですが、実際内容は“絶対に絶対悪でないといけないんだ”といったものばかりなんですよね。
そしてJASRACが消える事によって起こる事は、まず音楽レーベルだけでは著作権を管理しきれないので、とにかく上げられているコンテンツを削除していったり訴訟したりするという事。Youtubeにも演奏動画をもう上げられません。
そしてアーティストの主な収入源の一つである印税も無くなるという事。
そして著作権法も著作権という概念も無くなる事はなく、これからもっとしっかり整備されていくので、結局違う著作権会社によって同じように管理されるという事。
実際問題として、アーティストの主な収入源の一つは印税ですので、トンデモデマに惑わされず、
少なくとも“自分が音楽好きだと自称”しているような人は感情論ではなく、一度冷静になった方がいいかと思います。